「様子が違う」が伝わらない。介護の夜勤で、外国人スタッフとの申し送りが止まるとき
介護施設で外国人スタッフとの申し送りが通じない。技能実習生・特定技能の方が増えた現場で、「いつもと様子が違う」のような日本語をその場で共有する方法を、夜勤帯の実情に沿ってまとめました。
介護の現場で、外国人のスタッフの方はもう珍しくありません。技能実習、特定技能、留学生のアルバイト。夜勤帯を回しているのが外国人スタッフだけ、という施設も増えました。
そこで必ず出てくるのが申し送りの問題です。「いつもと様子が違う」「食が細い」「夜間せん妄が出ている」。この種の日本語は、日本語学校では習いません。
この記事では、申し送りのどこが難しいのかを分けたうえで、夜勤帯に聞ける相手がいない時間にできることを整理します。
日本語が得意な職員がいる時間と、判断が要る時間はずれています。
「様子が違う」「食が細い」。曖昧なのに、いちばん大事なことばです。
端末の中だけで訳すので、体調も家族の事情もサーバーへ送られません。
申し送りは、いちばん翻訳が難しい日本語でできている
介護の申し送りに出てくることばを並べてみると、その難しさが分かります。「いつもと様子が違う」「食が細い」「表情が硬い」「夜間そわそわしている」「傾眠がち」。どれも数値ではなく、感じ取ったことをそのまま日本語にしたものです。
日本語能力試験のN2を持っている方でも、この種のことばは通りません。教科書に出てこないからです。ところが介護では、まさにこの曖昧なことばの中に、いちばん大事な情報が入っています。
「熱は37度2分」は伝わります。伝わらないのは「熱は無いけど、いつもと違う」のほうです。そして急変の前触れは、たいてい後者に出ます。
夜勤帯には、聞ける相手がいない
日中であれば、日本語が得意な先輩に聞けます。しかし夜勤は少人数です。判断に迷ったとき、隣に聞ける人がいません。
その結果どうなるかというと、記録が薄くなります。「特変なし」とだけ書かれる。書いた本人が手を抜いたのではなく、感じ取ったことを日本語にできなかっただけです。翌朝の申し送りで初めて「昨夜こうだった」と口頭で出てくることもあります。
ここで必要なのは日本語教育ではありません。数か月かかる話に、今夜の利用者さんは待ってくれないからです。必要なのは今この場で、感じたことを母語のまま置いておける道具です。
「やさしい日本語」だけでは埋まらない差がある
やさしい日本語の取り組みは、とても有効です。文を短く切る、二重否定を使わない、漢語を和語に言い換える。これだけで通じる場面はかなり増えます。私たちも推奨しています。
ただし、やさしい日本語には限界もあります。言い換えると消える情報があることです。「傾眠がち」を「よく寝ています」に言い換えると、医療的な意味が落ちます。「そわそわしている」を「動いています」にすると、まったく別の意味になります。
だから現場では、両方を使い分けるのが現実的です。ふだんはやさしい日本語で。落とせない情報があるときだけ、母語でそのまま受け取る。
通信を使わない翻訳を、記録の手前に一度はさむ
私たちが作っている TransferFriends(トランスファーフレンズ)は、翻訳・音声の聞き取り・読み上げの3つとも、スマートフォンの中だけで動かします。通信を使いません。
施設の建物は鉄筋で、居室の奥や地下の設備室では電波が弱くなります。夜勤帯にクラウドの翻訳アプリが読み込み中のまま止まる、ということが起きません。
そしてもう1つ、介護では重い意味を持つ点があります。利用者さんの体調や、ご家族の事情が、サーバーへ送られません。個人情報の扱いを説明しなければならない立場の方にとって、ここは導入の可否を分ける部分です。
申し送り・利用者対応・ご家族対応の3つで使う
申し送りでは、外国人スタッフに母語で話してもらい、日本語の訳文を一緒に見ます。「いつもと様子が違う」に当たる表現が、その人のことばでどう出てくるかが見えるので、翌日の記録の質が変わります。
利用者さん対応では、上下に画面を分けて相手側を180度反転させる表示が使えます。ベッドサイドでスマホを持ち替えずに、短い確認が取れます。
ご家族対応は、いちばん重い場面です。外国籍のご家族への説明は、間違えられません。ここは訳文が文字で残ることが効きます。声だけで進めず、画面を一緒に見ながら確認できます。
使い方は3つの手順だけです。アプリを開いて「対面」モードを選ぶ、相手の言語を選ぶ、話してもらう。覚えることはありません。
導入するときに決めておくとよいこと
施設で使う場合、共用の端末を1台決めて、必要な言語のデータを先に入れておくのがいちばん簡単です。ベトナム語・インドネシア語・ミャンマー語・ネパール語・中国語・フィリピノ語など、実際に在籍しているスタッフの母語を入れておきます。
そして、使う場面を先に決めておくことをおすすめします。申し送りのうち「特変あり」のときだけ使う、ご家族への説明では必ず使う、というように決めておくと、現場が迷いません。
外国人スタッフの方にとっても、これは負担が減る話です。うまく言えないから黙る、という選択をしなくてよくなります。伝えられる前提があると、人は気づいたことを言うようになります。
よくある質問
使えます。通信を一切使わないので、居室の奥でも地下でも同じように動きます。最初に言語データをダウンロードするときだけWi-Fiが要ります。
送られません。翻訳も音声の聞き取りも端末の中で完結します。個人情報の扱いを説明する立場の方にも、そのまま伝えられます。
対応しています。86言語で、ベトナム語・インドネシア語・ミャンマー語・ネパール語・中国語・フィリピノ語などが入っています。
なりません。日本語の学習は続けたほうがよいです。これは学習が追いつくまでの間と、落とせない情報があるときのための道具です。
基本の翻訳は無料で使えます。App Store と Google Play のどちらからでも入れられます。
この記事のアプリは、無料ではじめられます。
iPhone・Androidどちらでも使えます。
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