「もう一度来てください」をなくす。市役所の窓口で外国人の住民と
市役所・区役所の窓口で外国人住民の転入・住民登録・各種届出の手続きが言葉で止まるとき、どこで二度手間になるのか。個人情報を外に出さず、その場で聞き取って書き直しをなくす方法を、窓口の流れに沿ってまとめました。
市役所の窓口の方から伺った話です。引っ越してきたばかりの中国人の方が、転入の手続きに来られる。何を出せばいいのか分からない様子で立っている。こちらも、何が足りないのかを伝えられない。
結果はいつも同じです。用紙を渡し、身振りで書いてもらい、書き直しになって、「もう一度来てください」。仕事を休んでもう一度来る側にとっても、同じ手続きを二度受ける側にとっても、もったいない時間です。
この記事では、窓口のどこで止まるのか、そして個人情報を外に出さずに、その場で聞き取るには何が要るのかを整理します。
足りない書類も、書き間違いも、その場で聞ければ一度で済みます。
端末の中だけで訳すので、窓口の会話がサーバーへ送られません。自治体の情報管理の規程と両立します。
住所・氏名・人数は画面の文字で確かめられます。声だけで進めないので書き直しが減ります。
窓口で止まるのは「手続き」ではなく「聞き取り」
転入届、住民登録、国民健康保険、児童手当。手続きそのものは決まった流れがあり、職員の方はそれを毎日こなしています。止まるのは手続きではありません。
止まるのは、その手前の聞き取りです。「いつ引っ越してきましたか」「家族は何人ですか」「前の住所はどこですか」「お子さんの学校は決まっていますか」。用紙の空欄を埋めるための質問が、言葉の壁で通りません。
用紙を渡して書いてもらっても、読めない欄は空いたままか、違うことが書かれます。そして書き直しになり、二度目の来庁になります。二度手間の原因は手続きの複雑さではなく、最初の聞き取りができないことです。
多言語の案内があっても足りない理由
自治体の多言語対応は、年々整ってきています。翻訳された案内のプリント、多言語の記入例、タブレット通訳を置く窓口も増えました。それでも現場から聞こえてくるのは、「案内は読んでもらえるが、その人の事情は聞けない」という声です。
住民の事情は一人ひとり違います。前の住所が海外なのか国内なのか、家族が一緒に来るのか後から来るのか、在留資格が何なのか。決まった案内では拾えない部分が、書き直しの原因になります。
タブレット通訳はとても有効ですが、つながるまでの時間と、混み合う時間帯の順番待ちがあります。窓口に列ができている午前中ほど、その数分を取ることが難しくなります。
翻訳アプリを窓口で使えなかった理由
職員の方の中には、自分のスマートフォンの翻訳アプリで乗り切った方もいます。そして、たいてい1つのところで止まります。個人情報です。
窓口で話すことは、住所、氏名、家族構成、在留資格、収入——そのまま個人情報です。多くの翻訳アプリは、話した声をいったんインターネットの向こうのサーバーへ送ります。自治体が扱う個人情報を、社外のサーバーへ通してよいのか。ここで、正式な導入が止まっている自治体を実際に見てきました。
もう1つ、庁舎は鉄筋で、地下や奥の窓口では電波が細くなります。手続きの途中で「読み込み中」のまま止まると、列がさらに伸びます。この2つは同じ1つの原因——訳す場所が端末の外にあること——から来ています。
通信を使わない翻訳、という選択肢
私たちが作っている TransferFriends(トランスファーフレンズ)は、翻訳・音声の聞き取り・読み上げの3つとも、スマートフォンの中だけで動かします。最初に言語のデータを入れておけば、あとは通信が一切要りません。
庁舎の地下でも、機内モードのままでも動きます。通信していないので、住所も家族のことも在留資格も、どこへも送られません。情報管理の規程との整合を、職員の方が自分の言葉で説明できます。
対応は86言語です。中国語・ベトナム語・韓国語・フィリピノ語・ネパール語・ポルトガル語・インドネシア語・ミャンマー語など、窓口に実際に来られる方のことばは入っています。
窓口で、そのまま使える流れ
使い方は3つの手順だけです。①アプリを開いて「対面」モードを選ぶ、②相手の言語を選ぶ、③カウンターにスマホを置いて話してもらう。訳文が画面に文字で出て、読み上げも流れます。こちらが日本語で返せば、相手のことばになります。
画面を上下に分けて相手側を180度反転させる表示があるので、カウンター越しにスマホを持ち替えずにやり取りができます。訳文は文字でも残るので、用紙と画面を並べて、書く場所を一緒に指さしながら進められます。
聞く順番を決めておくと速く終わります。①いつから住んでいるか ②家族の人数 ③前の住所 ④持ってきた書類。この4つを画面の文字で確かめてから用紙に進むだけで、書き直しがほとんどなくなります。住所・氏名・人数は、必ず画面の文字で。声だけで進めないことが、窓口ではいちばん大事です。
庁内で先に決めておくと、迷わない
導入する前に決めておくとよいことが3つあります。1つめはどこまでをアプリで、どこからを通訳・多言語書面にするか。聞き取りと記入の補助まではアプリ、制度の説明や同意が要る場面は正式な通訳、と線を引いておくと窓口が迷いません。
2つめは訳文を記録に残すかどうか。確認だけに使うのか、聞き取りの控えとして残すのかを決めておきます。3つめは端末です。窓口共用の1台にしておくと、設定と言語データの管理が楽になり、情報管理の説明も一本化できます。
念のため書いておきます。制度の説明や同意が必要な場面では、正式な通訳や多言語の書面を使ってください。アプリはその手前の聞き取りを確実にするための道具で、通訳の代わりではありません。
よくある質問
使えます。翻訳も音声の聞き取りも読み上げも端末の中で動くので、機内モードのままでも動きます。最初に言語データをダウンロードするときだけ、Wi-Fiのある場所でお願いします。
送られません。通信を使わないので、会話の中身がサーバーを通ることがありません。自治体の情報管理の規程との整合も説明しやすくなります。
なりません。制度の説明や同意が必要な場面では正式な通訳・書面を使ってください。このアプリは、その手前の聞き取りを確実にするための道具です。
86言語です。中国語・ベトナム語・韓国語・フィリピノ語・ネパール語・ポルトガル語・インドネシア語・ミャンマー語・英語など、窓口で実際に必要になるものは入っています。
基本の翻訳は無料で使えます。App Store と Google Play のどちらからでも入れられます。
この記事のアプリは、無料ではじめられます。
iPhone・Androidどちらでも使えます。
こちらの記事もどうぞ
海外旅行で言葉が通じないとき|黙ってしまう前にできること 旅先で困るのは英語力の不足ではなく、確認できないまま進んでしまうことです。
スマホは翻訳し続けると熱くなる|10分で2〜3割遅くなる実測 長時間の連続通訳では、端末の熱が現実的な上限になります。実際に測った数字です。
4分が11秒になった一行|Androidでオフライン翻訳を速くした話 スマホの中でAIの翻訳を動かすと何が起きるか。実際に測った数字だけで書いた開発の記録です。
避難所で外国人住民に案内が届かない|電波が消えた夜に、自主防災でできること 災害のとき、電波はいちばん先に消えます。その夜に翻訳アプリが動かない理由と、動く選択肢をまとめました。