← ブログの一覧へ

電波が消えた夜、避難所の案内は外国人の住民に届いていたか

2026.09.15

災害時の避難所で、外国人の住民に給水や配給の案内が届かない。電波が落ちて翻訳アプリも動かない夜に、自主防災組織や自治会の担当者がその場でできることを、実際の避難所運営の流れに沿ってまとめました。

非常灯だけがついた体育館の避難所で、ベストを着た男性が子どもを抱いた外国人の女性と話している

避難所の運営に関わった方から伺った話です。停電した体育館で、ブラジルから来たお母さんが小さな子どもを抱えて立っている。何かを聞きたそうにしている。でも、こちらのポルトガル語は「オブリガード」しか無い。

スマートフォンの翻訳アプリを開く。読み込み中のまま止まる。基地局が落ちていて、電波が無い。——災害のとき、いちばん先に消えるのは電波です。そして、いちばん先に必要になるのが言葉です。

この記事では、避難所で外国人の住民に案内が届かない理由と、電波が無いまま届ける方法を整理します。

📴
電波が無くても動く

翻訳も聞き取りも読み上げも端末の中で動きます。基地局が落ちた夜でも止まりません。

🔦
電池のほかに要るものが無い

Wi-Fiも、SIMも、サーバーも要りません。モバイルバッテリーが1つあれば一晩もちます。

🏠
名前も家族のことも外に出ない

避難者名簿の内容や家族の事情がどこにも送られません。

災害のとき、電波はいちばん先に消える

大きな地震や水害のあと、基地局は停電と回線の断絶で止まります。復旧までの数時間から数日、その地域はまるごと圏外になります。避難所の体育館も例外ではありません。

普段の翻訳アプリの多くは、話した声をインターネットの向こうのサーバーへ送って、そこで聞き取りと翻訳をしています。電波が無ければ、何も返ってきません。平時に頼りにしていた道具が、いちばん必要な夜に沈黙します。

「事前にダウンロードすればオフラインで使える」と書かれたアプリでも、文字の翻訳だけがオフライン対応で、声の聞き取りや読み上げは通信が要るものが多くあります。避難所で必要なのは、声で話して、声で返ってくることです。

暗い体育館の中で、スマートフォンを持つ手。奥に毛布と座っている人がぼんやり見える
圏外の避難所では、クラウドの翻訳は「読み込み中」のまま止まります。

届かないのは「案内」ではなく「その先」

避難所の張り紙は、多言語のものが整ってきました。「給水は8時から」「トイレはこちら」。ただ、張り紙で伝わるのは決まった案内までです。

実際に困るのはその先の一言です。「子どもの分は別にもらえますか」「薬を飲むための水はありますか」「明日も同じ時間ですか」。張り紙には書いていない、その人だけの質問に、その場で答えられるかどうか。ここで止まります。

聞けなかった人は、聞くのをやめます。そして列に並ばず、水を受け取らずに夜を越します。案内が届いていないのではなく、聞き返す道が無いのです。

暗い体育館で、水のペットボトルが手から手へ渡されている
「子どもの分は」の一言が聞ければ、水は届きます。

通信を使わない翻訳、という選択肢

私たちが作っている TransferFriends(トランスファーフレンズ)は、翻訳・音声の聞き取り・読み上げの3つとも、スマートフォンの中だけで動かします。最初に言語のデータを入れておけば、あとは通信が一切要りません。

基地局が落ちても、Wi-Fiが無くても、機内モードのままでも動きます。要るのは電池だけです。モバイルバッテリーが1つあれば一晩もちます。対応は86言語で、地域に住む外国人の方のことば——ポルトガル語・ベトナム語・中国語・フィリピノ語・ネパール語・インドネシア語など——は入っています。

通信していないので、避難者名簿にあるような名前、家族の人数、持病の話が、どこへも送られません。避難所で扱う情報は、そのまま個人情報です。外に出ないことは、運営側にとっても大事な条件になります。

避難所で、そのまま使える流れ

使い方は3つの手順だけです。①アプリを開いて「対面」モードを選ぶ、②相手の言語を選ぶ、③スマホを間に置いて話してもらう。訳文が画面に文字で出て、読み上げも流れます。こちらが日本語で返せば、相手のことばになります。

画面を上下に分けて相手側を180度反転させる表示があるので、向かい合ったまま、スマホを持ち替えずにやり取りができます。暗い体育館では画面が明かりにもなります。

避難所で聞く順番は決まっています。①家族の人数と子ども・高齢者の有無 ②けがや持病、飲んでいる薬 ③今いちばん要るもの。この3つを画面の文字で確かめてから、給水や配給の案内に進みます。

平時に、1つだけやっておくこと

災害が起きてからでは、言語データのダウンロードができません。平時に、自主防災の担当者の端末に入れておく——やっておくことは、これだけです。数分で終わります。

地域にどの国の方が住んでいるかは、自治会や国際交流協会がだいたい把握しています。その言語だけ先に入れておけば足ります。全部を入れる必要はありません。

防災訓練のときに、一度だけ声に出して使ってみてください。「水は朝8時から、入口で配ります」。それが本番の夜に、そのまま出てきます。訓練で一度通った言葉は、本番でも通ります。

よくある質問

基地局が落ちて完全に圏外でも使えますか

使えます。翻訳も音声の聞き取りも読み上げも端末の中で動くので、機内モードのままでも動きます。最初に言語データをダウンロードするときだけ、Wi-Fiのある場所でお願いします。

避難者の名前や家族の情報が外部に送られませんか

送られません。通信を使わないので、会話の中身がサーバーを通ることがありません。

電池はどのくらいもちますか

普段の使い方と大きく変わりません。翻訳のたびに端末の中で計算するので、連続で使うと通常より減りは早くなります。モバイルバッテリーを1つ用意しておくと安心です。

どの言語に対応していますか

86言語です。ポルトガル語・ベトナム語・中国語・韓国語・フィリピノ語・ネパール語・インドネシア語・英語など、地域に住む外国人の方のことばはたいてい入っています。

料金はかかりますか

基本の翻訳は無料で使えます。App Store と Google Play のどちらからでも入れられます。

ほかの質問も見る →

この記事のアプリは、無料ではじめられます。

iPhone・Androidどちらでも使えます。

こちらの記事もどうぞ

ブログの一覧を見る →