何をされるか分からないから、こわい。歯科医院で、外国人の患者さんに今日の処置を先に渡す
歯科医院で外国人の患者さんに「今日は何をするか」が伝わらないと、こわがったまま処置が始まります。医療通訳を呼べない診療時間に、削る・削らない、痛い・痛くないを処置の前に伝える方法と、線を引くべき場面をまとめました。
歯科医院の先生から伺った話です。ベトナムから来た患者さんが、診察の椅子に座ったまま体をこわばらせている。今日は型を取るだけで、削らない。痛くない。それを伝えられないまま、器具を近づける。
患者さんは、前回の治療が痛かったのかもしれない。母国で歯科がこわい体験をしたのかもしれない。何をされるか分からないから、こわい。「今日は削りません」の一言が渡れば、それだけで変わるのに。
この記事では、歯科の処置の説明のどこが抜けるのか、そして処置の前に「今日は何をするか」を渡すには何が要るのかを整理します。診断や治療方針の話ではありません。その手前の話です。
削るか削らないか、痛いか痛くないか、何分か。この3つが先に渡れば、こわがらずに始められます。
端末の中だけで訳すので、患者さんの症状や既往歴がサーバーへ送られません。
医療通訳を呼べない診療時間でも、処置の前の説明は止まりません。
こわいのは「痛み」ではなく「分からないこと」
歯科がこわいという患者さんは、日本人にも多くいます。ただ、外国人の患者さんのこわさには、もう1つ理由が重なります。何をされるか分からないことです。
日本人の患者さんには「今日は型を取るだけです」「少しチクッとします」「10分で終わります」と伝えています。この一言で、体のこわばりは解けます。外国人の患者さんには、この一言が渡っていません。
結果、こわがったまま処置が始まります。体がこわばれば処置はやりにくく、時間もかかり、次の来院にもつながりません。説明が無いことが、治療そのものを難しくしています。
医療通訳は、処置の前の一言には来ない
医療通訳の制度は整ってきています。ただ、歯科の日常の処置に通訳を毎回入れることは、現実的ではありません。順番待ちと費用の両方で、日々の診療には間に合いません。
通訳が要らないという話ではありません。診断、治療方針、抜歯や手術の同意、費用の説明には、必ず通訳を入れるべきです。ただ、そこに至る手前の「今日は何をするか」まで通訳を待っていると、通訳の来ない日の処置は説明無しで進むことになります。
処置の前の一言は、医療の判断ではありません。予告です。予告だけは、その場で渡せる手段を持っておく価値があります。
翻訳アプリを診察室で使いにくかった理由
先生や歯科衛生士の方の中には、自分のスマートフォンの翻訳アプリで乗り切った方もいます。そして、たいてい2つのところで立ち止まります。
1つめは患者さんの情報です。症状、既往歴、飲んでいる薬、アレルギー。多くの翻訳アプリは、話した声をいったんインターネットの向こうのサーバーへ送ります。医療機関が扱う情報を、社外のサーバーへ通してよいのか。ここで院長の判断が止まります。
2つめは手がふさがることです。手袋をした手で画面をタップして、持ち替えて、患者さんに見せる。診察室でこの往復は現実的ではありません。
通信を使わない翻訳、という選択肢
私たちが作っている TransferFriends(トランスファーフレンズ)は、翻訳・音声の聞き取り・読み上げの3つとも、スマートフォンの中だけで動かします。最初に言語のデータを入れておけば、あとは通信が一切要りません。
通信していないので、症状も既往歴も飲んでいる薬も、どこへも送られません。院内の情報管理の規程と両立します。ビルの中の医院で電波が細くても、機内モードのままでも動きます。
対応は86言語です。ベトナム語・中国語・英語・ネパール語・ポルトガル語・フィリピノ語・韓国語など、実際に来院される患者さんのことばは入っています。
処置の前に、渡す順番
診察の椅子の横の台にスマホを1台置きます。画面を上下に分けて相手側を180度反転させる表示があるので、椅子に座った患者さんと向かい合ったまま、持ち替えずにやり取りができます。先生が日本語で話す、患者さんのことばで出る。患者さんが話す、日本語で出る。
渡す順番を決めておくと1分で終わります。①今日すること ②削るか削らないか、痛いか痛くないか ③何分くらいか ④痛かったら左手を挙げる ⑤「心配なことは」と聞く。動画の「今日は痛くなるのが心配」は⑤で初めて出てきます。聞かれなければ、言われません。
④の合図は、必ず画面の文字で確かめます。処置が始まったら声は出せません。「痛かったら左手」が渡っているかどうかで、処置中の安心が変わります。
院内で線を引いておくと、迷わない
導入する前に決めておくとよいことが3つあります。1つめはどこまでをアプリで、どこからを通訳にするか。「今日すること」の予告と痛みの合図まではアプリ、診断・治療方針・同意・費用は通訳、と線を引いておくとスタッフが迷いません。
2つめは記録に残すかどうか。訳文をカルテに写すのか、確認だけに使うのか。3つめは端末です。診察室の共用端末に入れておくと、情報管理の説明が一本化できます。
念のため書いておきます。診断・治療方針・抜歯や手術の同意・費用の説明には、必ず医療通訳を入れてください。このアプリは、その手前の「今日は何をするか」を確実に渡すための道具で、通訳の代わりではありません。
よくある質問
使えます。翻訳も音声の聞き取りも読み上げも端末の中で動くので、機内モードのままでも動きます。最初に言語データをダウンロードするときだけ、Wi-Fiのある場所でお願いします。
送られません。通信を使わないので、会話の中身がサーバーを通ることがありません。院内の情報管理の規程との整合も説明しやすくなります。
なりません。診断・治療方針・同意・費用の説明では医療通訳を入れてください。このアプリは、処置の前の「今日は何をするか」を確実に渡すための道具です。
86言語です。ベトナム語・中国語・英語・ネパール語・ポルトガル語・フィリピノ語・韓国語など、来院される患者さんのことばはたいてい入っています。
基本の翻訳は無料で使えます。App Store と Google Play のどちらからでも入れられます。
この記事のアプリは、無料ではじめられます。
iPhone・Androidどちらでも使えます。
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