「わかりました」の3時間後に、不良品が出る。工場の作業指示で起きていること
工場で技能実習生や特定技能の外国人スタッフに作業指示が伝わらないとき、どこで食い違うのか。朝礼の「わかりました」のあとに不良や事故が起きる理由と、手順・注意点をその場で確かめる方法を、製造現場の流れに沿ってまとめました。
製造業の班長さんから伺った話です。朝礼で今日の作業を説明する。ベトナムから来た実習生がうなずいて「わかりました」と言う。3時間後に、傷の入った製品が10個並ぶ。
実習生は怠けていたわけではありません。「両手で持つ」という一言が抜けていただけです。そして本人は、抜けていたことを知らないまま作業を続けていました。「わかりました」は、分かっていなくても出ます。
この記事では、作業指示のどこが抜けるのか、そして抜けたまま作業に入らないためには何が要るのかを整理します。
この記事の場面を、40秒の動画で
朝礼の場面です。ベトナム人の実習生の「今日の仕事は何ですか」から、「傷がつきやすいので両手で」という注意点が伝わるまでを40秒にまとめました。
「何をするか」は見れば分かります。抜けるのは「両手で」「先に電源を切って」のような、見えない一言です。
鉄骨の建屋と機械の陰では、クラウドの翻訳が止まります。通信を使わないので、ラインの脇でも動きます。
端末の中だけで訳すので、製品や工程の話がサーバーへ送られません。
抜けるのは「何をするか」ではなく「どうやるか」
作業指示のうち「何をするか」は、実は言葉が無くても伝わります。見本を見せ、指をさし、やって見せれば、たいていの人は真似できます。実習生はここで止まりません。
止まるのは「どうやるか」です。両手で持つ、この面を上にする、先に電源を切る、10個ごとに数を確かめる。やって見せても見えない部分——注意点、順番、理由——が抜けます。
そして抜けた本人は、抜けたことに気づきません。教わったとおりにやっているつもりで、教わっていない部分をやっていないだけです。朝礼から3時間後の不良品は、たいていここから出ています。
「わかりました」の正体
現場で最も誤解されているのが、この返事です。日本語を学んでいる人ほど、「わかりました」を早く言えるようになります。教科書の最初のページに載っているからです。
一方で、「ここが分かりません」を言うのはずっと難しい。何が分からないのかを説明する語彙が要るうえに、目上の人に聞き返すことに抵抗がある文化圏の方も多いからです。分からないまま、うなずくほうが楽になります。
責める話ではありません。仕組みの話です。「わかりました」を返事として受け取らず、確認の入口として扱うだけで、午後の不良品は減ります。
翻訳アプリを工場で使えなかった理由
すでにスマートフォンの翻訳アプリを試した班長さんも多いはずです。そして、たいてい2つの壁にぶつかります。
1つめは電波です。鉄骨の建屋、機械の陰、地下のピット。工場の中は電波が細く、圏外の場所も珍しくありません。多くの翻訳アプリは声をいったんサーバーへ送るので、電波が無いと止まります。
2つめは情報です。製品名、工程、図面の話、納期。翻訳アプリを通すたびに社外のサーバーへ送られています。取引先との秘密保持契約に照らして、それを誰が説明できるのか。ここで導入が止まっている工場を実際に見てきました。
通信を使わない翻訳、という選択肢
私たちが作っている TransferFriends(トランスファーフレンズ)は、翻訳・音声の聞き取り・読み上げの3つとも、スマートフォンの中だけで動かします。最初に言語のデータを入れておけば、あとは通信が一切要りません。
ラインの脇でも、地下でも、機内モードのままでも動きます。通信していないので、製品や工程の話がどこへも送られません。秘密保持の説明が、そのままできます。
対応は86言語です。ベトナム語・インドネシア語・フィリピノ語・中国語・ネパール語・ミャンマー語など、製造現場に実際にいる方のことばは入っています。
朝礼のあと、作業に入る前の1分
使い方は簡単です。アプリで「対面」モードを選び、相手の言語を選ぶ。作業台にスマホを置いて、日本語で話す。相手のことばで訳が出て、読み上げも流れます。相手が話せば、日本語になって返ってきます。
朝礼のあと、作業に入る前に1分だけ使います。順番は①今日の作業を相手に言ってもらう ②注意点を1つずつ確認する ③「分からないところは」と聞く。①が大事です。こちらが説明するのではなく、相手に言ってもらうと、抜けている部分がその場で見えます。
訳文は文字でも出るので、数字(個数、寸法、時間)は画面を一緒に見て確かめます。声だけで進めると、ここが聞き違いになります。
安全に関わることは、必ず確かめる
最後に、いちばん大事なことを書いておきます。「先に電源を切る」「ここに手を入れない」のような安全に関わる指示は、伝わったつもりで済ませないでください。
安全指示は、後から確認するものではありません。その瞬間に伝わらなければ、伝わらなかったのと同じです。手振りとカタコトには限界があります。訳文を画面に出して、相手に読んでもらって、うなずいてもらう。この30秒を惜しまないでください。
英語が話せるようになる必要はありません。必要なのは、抜けてはいけない一言だけを、確実に一度確かめることです。
よくある質問
使えます。翻訳も音声の聞き取りも読み上げも端末の中で動くので、機内モードのままでも動きます。最初に言語データをダウンロードするときだけ、Wi-Fiのある場所でお願いします。
送られません。通信を使わないので、会話の中身がサーバーを通ることがありません。取引先との秘密保持契約との整合も説明しやすくなります。
機械のそばでは聞き取りが落ちます。朝礼の場や作業台の脇など、少し静かな場所で使うほうが確実です。文字で打って訳す方法もあります。
86言語です。ベトナム語・インドネシア語・フィリピノ語・中国語・ネパール語・ミャンマー語・英語など、製造現場で必要になるものは入っています。
基本の翻訳は無料で使えます。App Store と Google Play のどちらからでも入れられます。
この記事のアプリは、無料ではじめられます。
iPhone・Androidどちらでも使えます。
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