もめごとは、預かったあとに始まる。クリーニング店の受付で、外国人のお客様に
クリーニング店の受付で、外国人のお客様に「このシミは落ちないかもしれない」「この素材は縮むことがある」が伝わらないまま預かると、仕上がりでもめます。できること・できないことを預かる前に渡す方法を、受付の流れに沿ってまとめました。
クリーニング店の店主さんから伺った話です。ブラジルから来たお客様が、シャツを持ってこられる。襟に古いシミがある。「これは完全には落ちないかもしれません」と伝えたい。でも、伝えられない。
身振りで「難しい」と示して、うなずいてもらって、預かる。仕上がりの日、シミが薄く残っている。「話が違う」。店主のほうは最初から言っていたつもりで、お客様のほうは聞いていないつもり。どちらも正しい。
この記事では、受付のどこで止まるのか、そしてできないことを預かる前に渡すには何が要るのかを整理します。
「落ちないかもしれない」「縮むかもしれない」が預かる前に渡っていれば、仕上がりでもめません。
訳文が文字で残るので、伝えたことをお互いに確認できます。
端末の中だけで訳すので、名前や電話番号がサーバーへ送られません。
もめごとは、仕上がりの日ではなく受付で決まる
クリーニングのもめごとは、仕上がりの日に表に出ます。シミが残った、縮んだ、ボタンが取れた。でも原因はその日にはありません。預かった日の受付に、あります。
日本人のお客様には「このシミは古いので、完全には落ちないかもしれません」「この素材は少し縮むことがあります」と伝えて、納得してもらってから預かっています。外国人のお客様には、この一言が渡っていません。
渡っていないまま預かると、仕上がりの日に初めて知ることになります。「話が違う」は、話をしていなかったことから起きます。
できること・できないことは、指では示せない
受付で伝えるべきことは決まっています。落ちるか落ちないか、縮むか縮まないか、いつ仕上がるか、いくらか。このうち日付と金額は書いて渡せます。
落ちない・縮むは、書いても伝わりません。「かもしれない」という程度と、「それでも出しますか」という確認が要るからです。身振りの「難しい」は、「できない」にも「がんばる」にも見えます。
そして聞けなかったお客様は、期待したまま預けます。期待は、仕上がりの日に失望に変わります。期待を預かる前に調整するのが、受付の仕事です。
翻訳アプリを店で使いにくかった理由
すでにスマートフォンの翻訳アプリを試した店主さんも多いはずです。そして、たいてい2つのところで立ち止まります。
1つめは手がふさがることです。衣類を広げて、タグを付けて、預かり証を書いている。画面をタップして、持ち替えて、相手に見せる往復が、受付の列を止めます。
2つめはお客様の情報です。名前、電話番号、住所。預かり証に書く情報が、そのまま会話に混ざります。多くの翻訳アプリは、話した声をいったんインターネットの向こうのサーバーへ送ります。それを社外のサーバーへ通してよいのか。個人商店であっても、気にする方は気にします。
通信を使わない翻訳、という選択肢
私たちが作っている TransferFriends(トランスファーフレンズ)は、翻訳・音声の聞き取り・読み上げの3つとも、スマートフォンの中だけで動かします。最初に言語のデータを入れておけば、あとは通信が一切要りません。
ビルの中の店舗でも、機内モードのままでも動きます。通信していないので、お客様の名前も電話番号も、どこへも送られません。
対応は86言語です。ポルトガル語・中国語・韓国語・英語・ベトナム語・フィリピノ語・ネパール語など、実際に来店されるお客様のことばは入っています。
預かる前の1分で、渡す順番
カウンターにスマホを1台置きます。画面を上下に分けて相手側を180度反転させる表示があるので、カウンター越しに、持ち替えずにやり取りができます。店主が日本語で話す、お客様のことばで出る。お客様が話す、日本語で出る。
順番を決めておくと1分で終わります。①気になる箇所を一緒に見る ②落ちるか落ちないか、縮むか縮まないか ③それでも出すか確認 ④仕上がりの日と金額 ⑤「ほかに気になることは」と聞く。動画の「このシミが心配」は①で出てきます。①で出た心配に②で答えるのが、受付の核心です。
③の確認は、必ず画面の文字で取ります。「落ちないかもしれませんが、出しますか」に「はい」をもらってから預かります。訳文は文字でも残るので、預かり証と一緒に、伝えたことをお互いに確認できます。
美容室でも整備工場でも、起きていることは同じ
この「できないことを、やる前に渡す」という考え方は、クリーニング店だけの話ではありません。やり直しの効かない仕事すべてに共通します。
美容室の「少しだけ」、整備工場の見積り、リサイクル店の査定。どれもやってしまってからでは戻せない点が同じです。だから、その手前の1分に手当てをする価値があります。
英語が話せるようになる必要はありません。必要なのは、できないことだけを、預かる前に確実に一度渡すことです。
よくある質問
使えます。翻訳も音声の聞き取りも読み上げも端末の中で動くので、機内モードのままでも動きます。最初に言語データをダウンロードするときだけ、Wi-Fiのある場所でお願いします。
送られません。通信を使わないので、会話の中身がサーバーを通ることがありません。
訳文は画面に文字で残ります。預かり証と一緒に画面を写真に撮っておくと、仕上がりの日にお互いに確認できます。
86言語です。ポルトガル語・中国語・韓国語・英語・ベトナム語・フィリピノ語・ネパール語など、来店されるお客様のことばはたいてい入っています。
基本の翻訳は無料で使えます。App Store と Google Play のどちらからでも入れられます。
この記事のアプリは、無料ではじめられます。
iPhone・Androidどちらでも使えます。
こちらの記事もどうぞ
海外旅行で言葉が通じないとき|黙ってしまう前にできること 旅先で困るのは英語力の不足ではなく、確認できないまま進んでしまうことです。
スマホは翻訳し続けると熱くなる|10分で2〜3割遅くなる実測 長時間の連続通訳では、端末の熱が現実的な上限になります。実際に測った数字です。
4分が11秒になった一行|Androidでオフライン翻訳を速くした話 スマホの中でAIの翻訳を動かすと何が起きるか。実際に測った数字だけで書いた開発の記録です。
避難所で外国人住民に案内が届かない|電波が消えた夜に、自主防災でできること 災害のとき、電波はいちばん先に消えます。その夜に翻訳アプリが動かない理由と、動く選択肢をまとめました。